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2019.11.04 » 1か月 前

首里城と妖怪(耳切り坊主)


首里城が炎上するという衝撃的なニュースが10月31日の未明にありました。主要施設の正殿と北殿、南殿がいずれも全焼するなど6棟計約4,200平方メートルが焼失しました。

正殿北側1階部分が火元とみられていますが、詳しい原因は11月4日時点では不明です。

再建に向けたクラウドファンディングでは、全国だけではなく海外からも再建支援があり、那覇市への寄付は2億円を突破したと伝えられています。

私自身も7年ほど前に出張で沖縄に行く機会があり、その際に首里城を見てきましたが、日本のお城や建物とは全く異なる雰囲気で、琉球王国独自の文化の趣が感じられる場所でした。

この首里城は、琉球王朝の政治を取り仕切る王城であると同時に、軍事施設の県内最大規模の城(グスク)でもありました。

また、首里城は同時に、宗教的施設でもあります。首里城南側には「京の内(けおのうち)」と呼ばれる聖域が広がっており、王族の血縁者の女性たちが巫女として、神事を行っていたと推測されています。つまり、首里城は、霊的な統治シンボルでもあったのです。

1429年に尚巴志王が三山統一により琉球王国を建国してから戦前まで、首里城は琉球のシンボルとして維持されていましたが、1945年(昭和20年)の太平洋戦争における沖縄戦の激しい爆撃により破壊され、戦後には跡地に琉球大学が建設され、この造成工事により遺構さえ跡形もなく消え失せてしまいました。その後、琉球大学の移転にともない遺構が発掘され、1980年代末期から復元運動が行われ、1992年(平成4年)に首里城という聖域が復活しました。その後2000年(平成12年)12月、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」として世界遺産に登録されました。

この度の火災は、沖縄の重要な文化遺産が失われてしまうという非常に残念な事件でした。

琉球のシンボルが一刻も早く復活されることを望みます。

ちなみに、11月4日には合掌造りの集落で世界遺産に登録されている岐阜県白川村の白川郷でも、駐車場で火災があり、小屋が全焼するという事件がありました。

冬になり、火事の多い季節になりましたので、火の元には用心しなければなりませんね・・・。

耳切り坊主の子守唄

今回は、首里城の近くに言い伝えられている妖怪のご紹介です。

沖縄県に伝わる子守唄の中に出てくる「大村御殿(現・中城御殿跡)」という、美しい首里城を望む龍潭池(りゅうたんいけ)の向かい側にある土地には、「耳切り坊主(みみちりぼーじ)」の言い伝えがあります。

子守唄は、以下のようなものとして伝えられています。

 大村御殿[うふむらうどん]の 角[かどう]なかい

 耳切坊主[みみちりぼうじ]の 立っちょんど

 幾体、いくたい 立っちょが~ヤ

 みっちゃい(三体)、よったい(四体)立っちょんど

 泣いちょる 童[わらべ] 耳ぐすぐす

 ヘイヨ~ヘイヨ~ 泣くなよ

唄の意味としては、

村長の居る屋敷、大村御殿の角々に、耳切り坊主の幽霊がいくつ立っているでしょう。三人も四人も立っているよ。

泣く子の耳は、グス、グスッと音を立てて切られるよ。ハイヨ、ハイヨ 泣くなよ。

という、子どもに聴かせるにはちょっと怖い内容の唄となっています。

黒金座主と北谷王子

「耳切り坊主」のモデルは、黒金座主(くるがにざーし)という実在したお坊さんです。黒金座主は天台宗の僧でしたが、妖術を使って寺を訪れた女性を誑かしたり、悪いことばかりしていました。

そこで王様は、北谷王子(ちゃたんおうじ)に黒金座主との命を懸けた勝負を命じます。

勝負の結果、北谷王子は黒金座主に勝ち、命を助ける代わりに耳を斬り落とします。しかしその傷がもとで、黒金座主は破傷風にかかって死んでしまいます。

黒金座主の死後、その怨霊が耳切り坊主となりました。なぜか女の子の耳は興味がなく、男の子の耳だけを狙って現れるとされます。男の赤ん坊が生まれたら、子を守るために、先ほどの唄を唄ったことから、「耳切り坊主」の子守唄ができたと云われます。

ちなみに、北谷王子の家系には、何代も跡継ぎの男子が生まれず、耳切り坊主の祟りとされています。

勝者により作られる伝承

妖怪の伝承にはよくあるように、耳切坊主もまた史実を元につくられています。しかし、実際に黒金座主が悪者であったかは意見が分かれるようです。

黒金座主は、当時の琉球における仏教界の社会的地位向上を訴えており、緊縮財政を進める琉球王府により粛清されたのだとする見方もあります。

歴史は勝者により作られると云いますが、妖怪や伝承もまた、生き残った勝者により作られることがあるということなのでしょう。

画像=NHKニュース、毎日新聞、沖縄タイムスより

文=渡辺恵士老

参考文献:「日本妖怪大事典」(水木しげる、村上健司、角川文庫)

 

■渡辺恵士老(けいちゃん)

北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。

現在は北海道札幌市と東京の二拠点生活をしながら、経営・ITコンサルティングを生業としているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の研究を続けている。

現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。

Twitter:twitter.com/keishiro_w

ブログ:blog.livedoor.jp/meda3594/

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