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2020.03.28 » 2か月 前

新型コロナと噂・デマ(口裂け女、オルレアンのうわさ)


新型コロナウイルスの影響がヤバいことになっています。

イタリア、韓国、アメリカなど全世界的に感染が広まっており、インドなど国を封鎖するところも出てきています。

3月24日には東京オリンピック2020の1年程度の延期が決定され、25日に小池都知事が緊急記者会見を開きオーバーシュートの重大局面ということとロックダウン(都市封鎖・首都封鎖)の可能性を伝え、26日には埼玉・千葉・神奈川など各自治体の知事や市長が東京との往来自粛を呼びかけました。

その後も東京を中心に日本国内の感染者数は増大し、27日時点では1,524人の感染者数となっています。

新型コロナの影響は経済活動や社会活動にも大きく影響し、株価は連日の乱高下、コロナ倒産となった中小企業も出てきています。

また、東京都の会見などを受けて、都内ではスーパーでの買い占めも増えてきています。

新型コロナと噂・デマ

少し前にはトイレットペーパーの買い占めも多く発生していましたが、トイレットペーパーがなくなるというのは結局はデマでした。

トイレットペーパーの件だけではなく、コロナウイルスに関する様々な噂やフェイクニュース、ゴシップ記事、チェーンメール等が流れており、情報に人々が振り回されている状態です。

緊急事態宣言や東京都の都市封鎖(ロックダウン)などがまことしやかにささやかれています。折しも、もうすぐエイプリルフールの時期です。

噂話は、それがまことしやかに語られると都市伝説となり、それが語り継がれていくと伝承となります。

口裂け女の噂

噂から生まれた妖怪として有名なものとして、口裂け女がいます。

1978年12月初めに岐阜県で噂が起こり、そこから半年ほどで全国に広まり、パトカーの出動騒ぎや集団下校など、実際の社会生活にも影響を及ぼしている事例です。

1979年8月、それまで全国を席巻していたこの噂は急速に沈静化しました。これは、夏休みに入り、子供達の情報交換=口コミが途絶えたためとされています。

この現象は野村純一の「口裂け女研究」で詳細に分析され、いち早く口裂け女を民俗学、口承文芸の見地から研究し、日本における怪談研究、都市伝説研究の先駆けとなったとされています。

口裂け女は普段はマスクで口を隠していますが、マスク不足の昨今では口裂け女も外を出歩けないのではないでしょうか・・・。

オルレアンのうわさ

古典的な噂にまつわる都市伝説としては、エドガール・モランの『オルレアンのうわさ』(忽然と女性客の消えるブティック)が有名です。

とあるブティックの試着室に入った女性が、いつまで待っても出てこない。一緒に来た夫(あるいは恋人や友人)が店員に尋ねても、「そんな客は来なかった」と返されてしまい、結局行方不明になってしまう。消えた女は人身売買に出されてしまうというストーリーです。

ストーリーの大枠としては、様々な作品に使われている都市伝説なので、似たような話を聞いたことがある人は多いと思います。

これは実際にフランスのオルレアンで1969年に流れた噂話が元になっています。オルレアンにあるブティックで、試着室に入った若い女性が次々と行方不明になっているという噂が流れました。疑惑の対象となった店舗は6店ありましたが、そのうち5店はユダヤ人が経営する店舗でした。あくまでも噂しかなく、実際にはそんな事件は発生していないにも関わらず、名指しされた6件のブティックが民衆に取り囲まれて暴動寸前の事態となりました。その後、「デマは反ユダヤ主義者による陰謀である」という報道がなされ、暴動を起こそうとした人々は自らが反ユダヤ主義者であると非難されることを恐れて口をつぐむようになり、噂は沈静化していきました。

この噂はオルレアンから各地に飛び火して、イタリアや香港など世界各地で同様の噂話が現地の実際の店舗等をモデルに改変されて見られるようになりました。

噂話が実社会に与える影響

このように、初めは単なる噂話だったものが、実際に社会活動へ影響を及ぼした事例は枚挙に事欠きません。

特に、恐怖や不安などの心理的要因が強い場合にはデマや流言飛語が広がりやすくなります。

今回の新型コロナウイルスに対しては、その予防・対処法から、その発生源、影響など様々な個所で「うわさ」が生まれていますが、そのほとんどは不安をあおるデマにすぎません。

過去の都市伝説や、妖怪の伝承を知っておくことが、自分の頭で考える際の拠り所となり、噂話やデマに流されずに判断できることにつながると思います。

 

画像=口裂け女(水木しげる)

参考文献:

『民俗学という不幸』(大月隆寛、青弓社)、『デマの心理学』(G・W・オルポート、L・ポストマン、南博訳、岩波現代叢書)、『消えるヒッチハイカー』(ジャン・ハロルド・ブルンヴァン、大月隆寛、重信幸彦, 菅谷裕子共訳、新宿書房)、『流言蜚語』(清水幾太郎、岩波文庫)、『流言の社会学 形式社会学からの接近』(早川洋行、青弓社)、『流言とデマの社会学』(廣井脩、文春新書)、『オルレアンのうわさ 女性誘拐のうわさとその神話作用』(エドガール・モラン、杉山光信訳、みすず書房)、『江戸東京の噂話―「こんな晩」から「口裂け女」まで』(野村純一、大修館書店)

文=渡辺恵士朗

 

■渡邉恵士老(けいちゃん)

北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。公認情報システム監査人(CISA)。

現在は経営・ITコンサルティングを生業として、北海道札幌市に居住しつつ道内各地や東京などを駆け巡っているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の調査研究を続けている。

現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。

Twitter:twitter.com/keishiro_w

ブログ:blog.livedoor.jp/meda3594/

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