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2020.04.22 » 4か月 前

妖怪散歩雑記壱・首塚大明神


最凶最悪と呼ばれる妖怪を知っているだろうか。大江山を拠点とし、平安時代の都を恐怖に陥れた鬼のことを。

そう、酒吞童子である。

頼光四天王大江山鬼神退治之図:月岡芳年

今や様々なゲームやアニメにも登場する鬼の頭領、それこそが酒吞童子なのだ。簡単に伝説を見ていこう。

 

時は平安朝、一条天皇の頃。西暦1000年前後、京の都は栄えていましたが、それはほんの一握りの摂関貴族たちの繁栄であり、世の中は乱れに乱れ民衆は社会不安におののいていました。そんな世の中で、酒呑童子は王権に叛き、京の都から姫君たちを次々にさらっていたのです。

 姫君たちを奪い返し酒呑童子を退治するため大江山へ差し向けられたのが、源頼光を頭に藤原保昌並びに四天王の面々、坂田公時、渡辺綱、ト部季武、碓井貞光ら6名です。

 頼光ら一行は山伏姿に身をやつし、道中、翁に化けた住吉・八幡・熊野の神々から「神便鬼毒酒」を与えられて道案内をしてもらい、途中、川のほとりで血のついた着物を洗う姫君に出会います。一行は、姫君より鬼の住処を詳しく聞き、酒呑童子の屋敷にたどり着きました。

 酒呑童子は頼光一行を血の酒と人肉で手厚く歓待しますが、頼光たちは例の酒を童子と手下の鬼たちに飲ませて酔い潰し、童子を返り討ち、手下の鬼共も討ち果たします。捕らえられている姫君たちを救い出し、頼光たち一行は都へ上がりました。

 討ち取られた酒呑童子の首は、王権に叛いたものの見せしめとして川原にさらすため、都に持ち帰られますが、途中、丹波、山城の国境にある老の坂で急に重くなって持ち上がらなくなり、そこで葬られたといわれています

日本の鬼の交流博物館より

今回は この伝説の終焉の地・首塚大明神に皆さんをお連れしようと思う。

  

最恐の心霊スポット⁉

妖怪としての功績のせいか、名前のせいか、首塚大明神付近では心霊の噂が絶えず、YOUTUBEなどでもそういった動画しか見かけない。非常に遺憾である。

インターネットで検索すると、「女性だけで行くと呪われる」「遊び半分でいってはならない」と言われているが、女性だけで行くと危ないのは立地のせいもあるだろうし、どの神社も遊び半分で行く場所ではない。この記事では、心霊スポットであることを否定し、正しい気持ちで参拝することを推奨する。(敬意は大切です!)

そういった噂がありながらも首塚大明神は、立派な神社である。ご利益は「首から上の病治癒」とのこと。これは、酒吞童子が首を切られたからだろうか。

京都駅から約2時間ほど電車やバスを乗り継いだ先に、首塚大明神はある。

初めて訪れたのは3年ほど前、それから半年に一回のペースで足を運んでいる。

  

林の入り口

バス停、「老ノ坂峠」を下車すると、殆ど歩行のための幅はない。交通量も多いので気を付けなければいけない。周りが木に囲まれた、山を開いた形の道路なのだろうと思う。霊園もあり、確かに心霊の噂があるのは仕方がないとも感じる。

  

道なりに進んで行くと、左手に小さな道が現れる。この道に足を踏み入れると毎回ひんやりとした空気が纏わりつく。車の往来の音も一気に遠くなる。苔むしたガードレールが、このあたりの寂しさを感じさせる。

入ってすぐにモーテルの廃虚がある。これも、このあたりの心霊スポット化に手を貸しているのだろう。

似たような道を進んで行くと、段々地面が凸凹してくる。舗装が剥がれかけているのだ。夏場に行くと、涼しくて木漏れ日も綺麗だ。

しばらく行くと、民家がぽつりぽつりと見えてくる。静かに歩くのを心掛ける。分かれ道には、親切に看板が。いつからこの案内なんだろうと毎回思う。手書きなのがなんだか微笑ましい。

バスを降りてから約15分。虫や鳥の声だけが聞こえる山の中を歩いてくと、それは唐突に現れる。

  

首塚大明神到着

その鳥居が見えてくると僕は動悸と歓喜で胸がいっぱいになる。それほどまでに厳かで、生半可な気持ちで訪れてはいけない地だと思っている。オカルト的な話に持って行きすぎたくないのだが、付き添いで来た友人は皆鳥居をくぐれなかった。圧倒されるような何かがあると僕は思っている。

小雨が降っていた時のものと、夏の木漏れ日が美しい時の写真を掲載しておく。この鳥居をくぐり、石段を上がった先に本殿がある。小高い丘の中にもいくつかの参道が交差している。

お社の写真を載せるのはあまり良くないので、本殿上部と、本殿前にある落雷を受けた木。樹齢どのくらいなのかわからないが、落雷されても尚、葉を生い茂らせている。

線香は山火事などが心配なので上げず、いつも上質な酒を持参して供える。本殿の裏手に、首が埋められているという場所がある。柵に囲まれたその塚に拝む。

酒吞童子首塚の由縁。石碑に刻まれた文字はそこまで劣化していない。これを読めば酒吞童子のことがすぐわかる!

雨に打たれた跡や、落雷の跡までもこの首塚神社の美しさを作っている。小雨の日も、快晴の日もこの神社は変わることなくそこにあった。

一通りのお参りが済んだところで下山し、また来た道を戻る。

  

帰るまでが妖怪散歩

何度も訪れている首塚大明神だが、何度来てもその荘厳さに身が震える。自分の近況報告をしたり心配事を打ち明けたりと、首塚大明神、ないしは酒吞童子には随分頼らせていただいている。

些細な、木漏れ日が綺麗だったことや、風が止んだことなどまで嬉しくなってしまうのだから、妖怪を信じるということは恋に近いのかもしれない。

勿論、遊び半分や冷やかしでは行ってほしくないが、異世界のような、しかし厳かで畏怖を感じさせてくれる首塚大明神を、ここに紹介しておきたい。きっと何か違うものを見せてくれるだろう。

念を押すが、絶対に遊び半分では行かないで欲しい。他の神社も勿論だが。

次はいつ行こう、と考えてバスに揺られるのが僕の楽しみなのであった。

  

画像:頼光四天王大江山鬼神退治之図 月岡芳年、鬼堂廻撮影

  

 ▼鬼堂廻(きどうかい)  酒吞童子を敬愛。 
執筆作品:「鬼胎」「憂虞」「大江山酒吞童子伝」「少年学入門」
サイト:note.com/jyaibotenor

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