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2020.09.27 » 4週間 前

家にまつわる怪異と妖怪


映画『事故物件 怖い間取り』を観てきました。

原作も読みましたが、映画の方はホラーというよりファンタジー色が強くなっており、大衆向けになっている感じがしました。(亀梨和也氏や瀬戸康史氏、その他芸人などたくさん出てましたし)

芸人の松原タニシ氏の原作では、事故物件に住んで起こった現象をリアルに描いており、必ずしも事故物件の原因や事件との関係が分からない不可解な現象は、同じような現象がいつ自分自身の身の回りで起こっても不思議ではないと感じました。

家や場所にまつわる怪異

事故物件つながりで、小野不由美原作小説を元にした映画『残穢』では、部屋で起こった不思議な現象から、そこから追及していくと因果が建物、土地、別の土地で起こった事件とのつながりに広がっていき、更にその途中で起こった事件や事故との因果が深まっていく様が怖くもあり興味深かったです。

呪怨』の佐伯伽椰子と俊雄が取り憑いている家も、ある種の事故物件になるでしょう。

大島てる」のおかげで、ここ数年で心理的瑕疵物件、いわゆる「事故物件」というものが一般化してきました。

かつては、家や建物そのものがタブー視されるというよりも、土地や場所に怨念や祟りがあるとされてきたように思います。

心霊スポットや廃墟、禁足地などは、その土地にある建物に紐づくものもあるでしょうが、建物そのものもというよりは、その土地や場所に何か因縁があるために忌まわしい場所とされるケースが多いようです。

昔、京都の三条通りより北を鬼殿といって、そこには霊がおり、まだ京都に都が移される前からいたとされます。

新耳袋』に出てくる「山の牧場」のエピソードでも、不気味な建物は出てくるものの、その建物や部屋といった物理的な場所よりも、その場所に関わったことにより起こる不可思議な現象にスポットが当てられていました。

家にまつわる妖怪たち

ちなみに、民俗学では、「家」「イエ」=「家筋」「家系」を主に指し、建造物としての家屋よりも、住居を拠点として生活上の共同関係を取り結ぶ家族集団、および家族を事実上の担い手とする超世代的な社会的単位を意味することが多いです。

長年使われた生活用品などの物には魂が宿り「付喪神」として妖怪化しますが、建造物としての家も、長年使われることで妖怪が宿ったり、棲み付いたりすることがあるようです。

家鳴り(鳴屋)」は、「ポルターガイスト」の日本妖怪版で、小鬼のようなものがいたずらで家を鳴らすものです。突然、家が軋んだり、戸がガタガタ揺れたりという現象は昔から西洋問わず発生していたようです。

天井嘗め」は、人の手の届かない天井を嘗めて汚し、しみを付けてしまう妖怪です。事故物件によくある「人の顔に見える天井のしみ」も、天井嘗めのしわざかもしれません。

座敷童子」は家を繁栄させるよい妖怪とされますが、その種族の中にも階級があり、上位の「チョウピラコ」は色が白く綺麗だとされる一方、「ノタバリコ」や「ウスツキコ」などは階級が低く内土間から這い出て座敷を這いまわったりと薄気味悪い存在とされています。

迷い家(マヨイガ)」は「遠野物語」に出てくる不思議な場所です。山中に、誰もいないのに、牛馬が飼われており生活の様子がある家があります。偶然迷い込むことはあっても、行こうとして行くことはできないと云われます。その家の食器を持って帰ってくると、金持ちになると云われます。「迷い家」の伝承は後年、都市伝説や様々な小説や物語のモチーフになったので、聞いたことがある人も多いかもしれません。家自体が物の怪なのか、物の怪が住まう家が「迷い家」なのか、様々な解釈があります。

今回は事故物件の話から派生して、家にまつわる妖怪をご紹介しました。

最後に、実はちょうどこの記事を書いている最中に、上の方で触れた映画『残穢』の主演を務められた竹内結子さんの訃報がニュースで流れてきました。

竹内結子さんは『リング』や『黄泉がえり』などにも出演されており、日本の映画界に影響を与えた女優の一人だったと思います。

自死ということでその理由は分からず残念でなりませんが、謹んでご冥福をお祈りします。

 

画像:『事故物件 怖い間取り』(松竹、中田秀夫監督)、『残穢 住んではいけない部屋』(松竹、中村義洋監督)、 『付喪神絵巻』、鳥山石燕『画図百鬼夜行』、鳥山石燕『百器徒然袋』、押切蓮介「ざしきわらしのタタミちゃん」、水木しげる「迷い家」

参考文献:「精選 日本民俗辞典」(福田アジオ、吉川弘文館)、「決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様」(水木しげる、講談社文庫)、「日本妖怪大事典」(水木しげる、村上健司、角川文庫)

文=渡邉恵士老

 

■渡邉恵士老(けいちゃん)

北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。公認情報システム監査人(CISA)、プロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)。

現在は経営・ITコンサルティングを生業として、北海道札幌市に居住しつつ道内各地や東京などを駆け巡っているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の調査研究を続けている。

現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。

Twitter:twitter.com/keishiro_w

ブログ:blog.livedoor.jp/meda3594/

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