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江戸川区・篠崎の狐伝承──“狐に化かされた男”と現代に蘇る幻影

「江戸川区って、妖怪のイメージある?」 そんな問いかけに、多くの人が「うーん……あんまり?」と首をかしげるかもしれません。でも実は、江戸川区・篠崎には“狐に化かされた”という、れっきとした伝承が残っています。

小松川の隣・篠崎に伝わる奇譚

江戸時代の随筆『梅翁随筆』には、ある男が体験した奇妙な話が記されています。

ある朝、男が篠崎付近を歩いていると、道端で寝ていた四匹の白狐を驚かせてしまいます。その後、急に雨が降り出したと思い、いつも休ませてもらっている家に駆け込むと、そこで「女房が亡くなった」と告げられ、留守番を頼まれます。ところが夜になると、棺の中から女房の霊が現れ、男の腕に噛みついた──。

気がつくと、男は血まみれで川の堤に座っており、実際には雨など降っていなかったそうです。これを聞いた人々は、口々に「狐に化かされたのだろう」と囁いたといいます。

日本各地に伝わる“化かす狐”たち

このように、狐に化かされたという話は日本各地にあります。特に関東では「道に迷う」「幻を見る」といった体験が多く報告され、狐は“人の心の隙間に入りこむ存在”として信じられてきました。篠崎の話も、そんな“日常に潜む非日常”の一つなのです。

妖怪屋の再現──ボディペイントで蘇る狐の幻影

この伝承を現代に伝えるため、妖怪屋では、以前ボディペインターMayura氏とコラボし「篠崎狐」の再現写真を制作しました。Mayura氏のX(@Faceart_Mayura)

江戸時代の挿絵から着想を得て、現代と融合させた作品です。ススキ野原の中、文献では四匹とありますが、二匹の狐が火を囲んでいる情景。

妖怪は地域の記憶

私たちが妖怪を取り上げる理由は、単に怖い話をしたいからではありません。そこには、地域に息づく記憶や空気を感じ取るための“鍵”のような役割があるからです。

次回は、また別の東京の妖怪伝承をご紹介します。さて、あなたの町にも、化かすものは潜んでいるかもしれませんよ。

それではまた、妖怪たちの気配が濃くなるころに。

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