ミントゥチカムイと河童
はじめまして。今回からライターとして加わりました、渡邉恵士老と申します。
現在は北海道と東京の二拠点生活をしながら、経営・ITコンサルティングを生業としていますが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の研究を続けております。
今回から、私の住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めて妖怪の話をしていければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
初回はさっそく、北海道にまつわる妖怪の紹介です。
北海道で一番有名な妖怪は、コロポックルでしょうか。
本サイトでも以前に取り上げられておりましたが、蕗(フキ)の葉の下にいる人です。
ちなみに、日本一巨大な蕗として知られる「ラワンぶき」は、成長すると高さ2~3mに達し、隣に立つと人間が小人のように見えます。
ラワンぶきの産地として有名な足寄町の道の駅には、足寄出身の有名人である松山千春がラワンぶきと並び、まるで小人のようにみえる写真が展示してあります。
ちなみに、サムネイルにも使った下の画像は函館の「北方民族資料館」にいるコロポックルです。
コロポックルと並んで有名なアイヌの妖怪が、ミントゥチカムイです。
ミントゥチカムイは、アイヌに伝わる半人半獣の霊的存在です。大きさは人間の子どもと同じくらいであり、悪戯者と言われます。
「ミントゥチ」とは、倭の国の言葉でいうところの「蛟(ミズチ)」であり、水神のことです。
水にまつわる神様であり、子どもと同じくらいの大きさ、悪戯好きなどの特徴を持つ妖怪。
何かと共通点が多いように思えませんか?
そう、ミントゥチカムイは、河童に類する妖怪と言われているのです。
「ミントゥチ」(蛟)という概念自体は、本州から北海道にもたらされた概念です。また、ミントゥチカムイ発祥の伝承についても、発端は江戸時代に本土からやってきた船により疫病が北海道にもたらされたことであり、それらを考慮すると、アイヌに元々あった神様の概念に、本州からもたらされた河童の概念が習合された可能性もあるかもしれません。
現在では、北海道の札幌にある温泉街・定山渓には、かっぱ大王や、大小様々のかっぱたちがいます(造り物ですが)。札幌駅から定山渓へ移動する際には、「かっぱライナー号」という高速バスが便利です。
↓は定山渓の「かっぱ大王」です。
河童は全国どこでも言い伝えのある妖怪ですが、北海道においても河童は身近でメジャーな妖怪ということなのです。
ちなみに、コロポックルの正体は千島アイヌ(北海道アイヌや樺太アイヌとは異なる文化・伝統を有する民族)だという説があります。
ミントゥチカムイにしろ河童にしろ、何かしら理由があって言い伝えられているはずなので、河童に近い人類や動物が実在したか、はたまたそれを伝承することで後世に残すべきメッセージが河童に託されているのかもしれません。
河童については、本当に全国各地に様々な言い伝えがあり、呼び名だけでも数十種類あって(ガラッパ、メドチ、エンコ、ヒョースベなど)、地域性も出ていて面白いので(沖縄のキジムナーも河童に類するものと言われることがあります)、機会がありましたら紹介させていただきたいと思います。
今回は北海道の妖怪というより、北海道の河童の話になってしまいましたが、北海道が河童を始めとする妖怪の一大生息地であることが伝われば幸いです。
それでは、これからどうぞよろしくお願いいたします。
文・写真=渡邉恵士老
参考文献:「精選 日本民俗辞典」(福田アジオ、吉川弘文館)、「アイヌ語・アイヌ口承文芸」(平取町立二風谷アイヌ文化博物館)、 「東北学 Vol.7 <総特集><北>の精神史」(赤坂 憲雄、東北芸術工科大学東北文化研究センター )、 「アイヌ叙事詩 神謡・聖伝の研究」(久保寺 逸彦、岩波書店) 、「1時間でわかるアイヌの文化と歴史」(瀬川拓郎、宝島社新書)
■渡辺恵士朗(けいちゃん)
北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。
現在は北海道札幌市と東京の二拠点生活をしながら、経営・ITコンサルティングを生業としているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の研究を続けている。
現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。
Twitter:https://twitter.com/keishiro_w
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