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汝は鉄鼠なりや?

夏の夜の匂いって何だか独特ですよね。どうも、8月以降も継続して妖怪ちゃんねるで記事を書かせて頂ける事になりました、神代です。ウェブライターとしての初仕事がこことの契約だったので、功が認められたような気がして嬉しいです。今後とも宜しくお願いします。

そういえば、7月末から8月初旬にかけて、滋賀県の三井寺という場所で妖怪関係のイベントをやっているそうですね。夜の三井寺に仮装した魑魅魍魎が現れてパレードを行うという、お寺が主催のイベントです。共催を地元の美大が行っているので仮装のクオリティには期待が持てます。

さて、何故イベントの話をいきなり始めたかというと、当イベントの会場である三井寺は、実はある妖怪と縁がある場所なのです。

それが、今日紹介する妖怪『鉄鼠』です。

この妖怪は、岩の肌に鉄の歯を持った化け鼠で、元々は三井寺の僧『頼豪』という人間であったとされています。彼は高名な僧であり、その実力は当時の天皇からも依頼が来るほどでした。

彼はある時、依頼を受けて天皇の世継ぎが生まれるように祈祷をしました。無事世継ぎが生まれた後に頼豪は褒美として三井寺に戒壇の設置を願い出ました。しかし、当時対立していた延暦寺の猛反対に合い、約束は反故になってしまいます。

契約書を交わしていなかったから約束を反故にされたのですかね。こういう風に報酬制度が曖昧な部分があると、僧侶たちも生活の為に闇営業に手を出さなければならなくなり寺内の風紀が乱れます。今だったら無報酬の主張をした延暦寺のTwitterあたりが炎上するのでしょうが、当時そんなものはなく(その後延暦寺は実際に炎上するのですが)、頼豪は泣き寝入りをする事に……

なったらまだ良かったのですが、頼豪も頼豪でそこそこアレな人でした。天皇と、何より延暦寺の行動に怒った頼豪は自らの祈祷で誕生した世継ぎを呪い殺し、まずは天皇に復讐を遂げます。

それだけでは飽き足らず 、妖怪・鉄鼠に姿を変え、いつの間にか出来たネズミ友達8万4千匹と共に延暦寺の仏像や経文を食い散らかします。関係者全域に恨みを晴らしましたね、とんだアベンジャーです。

これに懲りた延暦寺側は、頼豪の魂を鎮めるべく三井寺の付近に「ねずみの宮」という祠を立てます。頼豪は別にネズミになりたかったわけではなく、あくまで復讐のためにネズミに姿を変えたと思われるため「ねずみ」の宮と言うのは若干攻めたネーミングだと思いましたが(頼豪の宮で良かったのでは…?)、話がここで終わっているという事は頼豪は納得したのでしょうね、それでよかったのか。こういった逸話から、鉄鼠と言う妖怪は三井寺鼠、又は頼豪鼠とも呼ばれます。

復讐は正しいのか、正しくないのか。手垢まみれの議論かもしれませんが、こういった話を書いているとそんな疑問を改めて考える事があります。個人的に、復讐は推奨派です。加害者に壊された自らの人生に苦しみ続けなければならない、そんな状況であれば解決策としての復讐は肯定されるべきだと思います。

ですが、僕が誰かに殺されたら、身内や友達に仇を討って欲しいとは決して思いません。そんな人、案外多いのではないかと思います。

(画像:図画百鬼夜行)

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