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妖怪界のハーレム王?

“  〇〇の王(〇〇は一般的に汚い単語)って名前かっこいいよな ”(意訳)

Twitterのタイムラインに先日流れて来たツイートですが、激しく同意します。蠅の王、沼地の王、鼠の王、ほらもう何でもかっこいい。近年は正統派よりダークヒーローの方が流行る時代ですから、こういった価値観は普遍的になってきているのかもしれません。ほら、みんなデッド〇ールとかヴ〇ノムとか好きでしょう?

さて、妖怪界隈にも〇〇王はいます。その名も「塵塚怪王」

塵塚の怪しい王と言う名前は見慣れない単語の連続ですが、「塵塚」は決して格好良い意味のものではないです。塵の塚、読んで字のごとくゴミ捨て場です。ゴミ捨て場の怪しい王……あっ、一気に汚らしく見えてきた。

この塵塚怪王。近年の創作では、ゴミを司る神様、或いはゴミとして捨てられた付喪神の集合体のような扱いを受けていますが、元々の正体は山姥の王であるとされています。

いや山姥の王ってなんだ。

日本各地に山姥の話は数あれど、山姥同士が徒党を組むという話も、王の元で働くというような組織性があるという話も寡聞にして存じません。本当は民話に出てこない所では山姥には王の元で組合があり、週2でゲートボールなんかを嗜んでいるのでしょうか。

ちなみに山姥は伝承によって姿形が様々であり、一般的にイメージされる老婆の姿から若い美女の姿の山姥まで様々な個体が伝わっています。まさにハーレム王、羨ましい。モテる秘訣はゴミ捨て場を名乗る精神的ワイルドさでしょうか。

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この妖怪の出典である鳥山石燕の「百鬼徒然袋」は兼好法師の「徒然草」からの引用とみられる部分が非常に多いですが、塵塚怪王もその中の一体です。徒然草の原文の中には、こう書いてあります。

「多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵」

上の文を雑に訳すると「沢山あっても見苦しくないのは、本を運搬する車に乗っている本の山と、ごみ捨て場のごみだ」となります。この一文だけでは憶測する事しかできませんが、石燕はこの妖怪を悪い物の怪であるというイメージで作ったわけではないのかもしれません。

……にしても、原文では山姥の王的な要素はかけらも出てこないですね。後世の創作の方が名前・原点に準じている感すらあります。原典よりも、後世に創作された内容の方が膾炙されてしまう事はままありますが、塵塚怪王もそうした一体なのでしょう。

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  1. 2019年 6月 28日