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書物に籠る情念

どうも、梅雨です、憂鬱です、神代です。僕は暇な休日、よくB●OK-OFFなんかの中古書店に行くのですが、この時期は湿った古本の匂いで店内が何ともかぐわしくなるんですよね。何の匂いなんでしょうかあれ、雨の日は引きこもるに限ります。

というわけで、今日は書物……を運ぶ車にまつわる妖怪、文車妖妃(ふぐるま—ようひ)を紹介します。

文車妖妃は、文車(ふぐるま)という書物を載せて運搬する車に憑いた妖怪であり、鳥山石燕の解説文では「昔の人が書いた文からは並々ならぬものが出てくることがある。であれば、それを大量に積んだ文車からは妖怪が出てきても何ら不思議ではない」と説明されています。

一説によると、文車妖妃は文車に積まれた書物の中でも、恋文に込められた恋心や執着心が妖怪となったものだと言われています。恋文から出てきた妖怪が恋を成就させてくれる!という展開なら非常にロマンチックなのですが、文車妖妃の具体的な行動に関しては記載がなく、恋文の中からただ偶発的に現れるだけではないかと思われます。う~んがっかりサプライズ。

さて、そんな彼女には対になる妖怪がいます。先日紹介した山姥界隈のハーレム王、塵塚怪王です。実はこの二体、共に徒然草の「多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵」という文を元に鳥山石燕が創作した妖怪なんです。ちなみに上記を訳すると、「沢山あって見苦しくない物は、ゴミ捨て場(塵塚)のゴミと、文車に積まれた本くらいだね」くらいの意味になります。

さしずめ二人は妖怪界隈の「まあ悪くはないコンビ」でしょうか。悪くないコンビって微妙ですね。何も褒めるところはないけど、まあ悪人ではないよな~……みたいな、限りなくマイナスに近い評価を感じます。

ただ、山姥界のハーレム王である塵塚怪王に対し、文車妖妃には男女の仲に関する設定があるような逸話は見つかりませんでした。一つ目小僧の逆ハーレムとかないのかな、と秘かに楽しみにしていましたが、残念です。

文車妖妃に関係があるかはわかりませんが、恋愛感情、特にそこから生じる嫉妬や恨みによって発生した怪異・伝承は多数あります。かの大妖怪、酒呑童子も貰ったラブレターを燃やしたらになりましたし、清姫も嫉妬に身を焦がして蛇体の化物になりました。強い感情って怖いですね。

SNSの発達や、生き方の多様化によって愛の形が変化してきた現代では、また新たな妖怪が生まれるかもしれません。

(画像:百鬼徒然袋)

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