妖怪が宇宙へ飛び立つ日
アメリカCNNテレビは9月19日に、未確認飛行物体(UFO)の可能性があるとされた飛行物体の映像について、米海軍が「本物」の未確認航空現象(UAP)として分類し調査していることを認めたと報じました。
CNNによると、飛行物体の映像は2004年と15年、パイロットの訓練中などに撮影された計3本で、軍の機密指定が解除され17~18年に公開されていた。赤外線センサーが高速移動する長方形の物体をとらえたといいます。
UFOをめぐっては今年5月にも、南部フロリダ州沿岸で訓練飛行中の海軍戦闘機が「極超音速で飛行する物体」を撮影した映像が公開されています。米メディアによると、米国防総省は07年以降、UFOの目撃情報の調査のため専門チームを作り秘密裏に調査を実施。12年までに約2,200万ドル(約23億7,000万円)が投じられたとされています。
また、9月20日には、米ネバダ州南部にあるグルーム・レイク空軍基地、通称「エリア51(Area 51)」にナルト走りで急襲しようというイベント「ストーム・エリア51(Storm Area 51)」がフェイスブック(Facebook)を通じて呼びかけられ、200万人以上が参加を表明、実際には70人程度が集まり、数人が逮捕されたといいます。
エリア51は、墜落したUFOを手本にして極秘裏に地球製UFOが開発され、夜間にテスト飛行が行われているばかりか、地下基地には生きた宇宙人もいるという噂が昔からある施設として有名です。
日本での宇宙とのめぐりあい
一方、日本では、9月12日にヤフーによるZOZO(旧スタートトゥデイ)の買収が報じられ、創業者であり前代表取締役社長兼CEOの前澤友作氏は退任し、「どうしても宇宙に行きたい」と涙ながらに語りました。
具体的には2023年に月への渡航を計画しており、その月への渡航前に一度宇宙に行く予定があり、2回宇宙へ飛び立つことも公表されました。今後は渡航のためのトレーニングに入るそうです。
なお、民間月旅行の運営は米ロケット企業SpaceX(スペースX)が行い、前澤友作氏はその最初の搭乗客となる予定とのことです。
今年は、北海道大樹町ではホリエモンこと堀江貴文氏も出資するインターステラテクノロジズ(IST)が観測ロケット「MOMO(モモ)」の実験発射を行い民間では初めて宇宙空間に到達し、日本の 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ地下の物質を採取するためのタッチダウンを行い、小型ロボット「ミネルバ2」を放出したとのニュースもあり、宇宙関連の話題の多い年です。
スペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去するアストロスケールや、月面探査レースに挑戦するHAKUTO(ispace)、人口の流れ星を作るALEなど、宇宙ビジネスのスタートアップ、ベンチャー企業も盛り上がっています。
今後、日本での航空宇宙自衛隊の創設や、アメリカ宇宙軍の再建も検討されていると噂され、宇宙は遠い存在ではなく、今やビジネスの対象であり、多くの人類の活動領域は近いうちに宇宙にまで拡大するかもしれません。
宇宙からの使者?「 虚舟(うつろぶね)」
というところで、今回は宇宙と関わりが深い(?)かもしれない妖怪を紹介します。(厳密には妖怪というより、伝承や伝説ですが・・・。)
「虚舟(うつろぶね)」は、日本各地の民俗伝承に登場する架空の舟です。
その異様な形から現代では、UFOやタイムマシーンではないかといった推測がなされています。
「虚舟」のうち最も有名なものは、曲亭馬琴(滝沢馬琴)が『兎園小説』(1825年刊行)に『虚舟の蛮女』との題で図版とともに収録した、1803年に常陸国(茨城県)に漂着した事例です。
享和3年(1803年)、常陸国鹿島郡にある旗本(小笠原越中守、小笠原和泉守などとされる)の知行地の浜に、虚舟が現れました。虚舟は鉄でできており、窓があって(ガラスのようなものが張られている)、丸っこい形をしており、外側には文字のようなもの(宇宙文字?)が書かれていました。
その中から現れたのは、異国の女性(蛮女)であり、18歳くらいの美しい髪の毛の赤い女の子であったと云われます。彼女は謎の箱を持っていました。
村の古老が語るところによると、彼女は異国の王の娘など高貴な身分の者であったが、不義があったために相手の男は処分され、その者の首を箱に入れ、女性の方は処刑するのが忍びなかったために、舟に入れて流されたのではないかということでした。
虚舟は、茨城県沖まで流れ着いたものの、当時はまだ江戸幕府の海禁政策(鎖国)の只中であり、処罰を恐れた村人たちによって、再び沖に流されたそうです。
その後の虚舟の行方は分かってはいません。
「虚舟」の正体は?
当時の「虚舟」の絵を見ると、とても船に見える外観ではなく、現代の人びとが想像するUFOやタイムマシーンのイメージに近いように見えます。
しかも、「虚舟」は若い女性が一人乗っているだけで、その動力源など謎が多く、江戸時代の日本では考えられないような変わった船であることから、UFOや宇宙人、タイムマシーンという説も濃厚ではないかと考える人も多いです。
しかし、現実的には、海外から漂着した船である可能性が高いと考えられます。
江戸時代当時、日本から海外に漂流した事例として、伊勢(三重県)からロシア領アリューシャン列島まで漂着した大黒屋光太夫、土佐(高知県)から伊豆諸島に流されアメリカの捕鯨船に保護されたジョン万次郎などの例もありますから、海外から日本沖に漂着する船も当時は珍しくなかったでしょう。
日本各地に「虚船」あるいは同類の伝承があるのは、それだけ漂着船が多かったということだと思います。
岐阜大学名誉教授・田中嘉津夫先生は計算電磁気学・プラズモニクス・画像工学の専門家ですが、「うつろ舟」の研究をされており、常陸国のうつろ舟については具体性が高いと言及されています。
また、茨城県の蚕影神社に伝わる「金色姫」の伝説が、「虚船」の蛮女のイメージに影響を与えたのではないかとも云われています。
とはいえ、UFOやタイムマシーンを肯定するものではなく、漂流者の噂話が伝達されるにつれて拡大解釈されていった、都市伝説の類ではないかとされています。
宇宙妖怪X
ということで、「虚舟」が宇宙からの使者である可能性は低いものの、何者であるかが明確には分からない以上、その可能性が捨てきれるわけでもないでしょう。
これから人類にとって宇宙が身近になる時代が到来すれば、「虚舟」の謎ももしかすると解明される日がくるかもしれません。
ちなみに、1993年に発売されたスーパーファミコンのソフト『ゲゲゲの鬼太郎 復活! 天魔大王』で、敵キャラは未来の「宇宙妖怪」という体裁でした。
人類が宇宙に進出する時、妖怪もまた宇宙に進出していくのかもしれません。
画像=「梅の塵(空船の事)」長橋亦次郎、「兎園小説(虚舟の蛮女)」曲亭馬琴
文=渡邉恵士老
参考文献:「日本随筆大成『兎園小説』(うつろ舟の蛮女)」(曲亭馬琴、吉川弘文館)、「定本 柳田國男集 第9巻」『うつぼ舟の話』(柳田国男、筑摩書房)
■渡辺恵士老(けいちゃん)
北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。
現在は北海道札幌市と東京の二拠点生活をしながら、経営・ITコンサルティングを生業としているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の研究を続けている。
現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。
Twitter:https://twitter.com/keishiro_w
実は、UFOや宇宙人というものが心霊現象、つまり妖怪の一種であるとジョン・A・キールなどのフォーティアン(超常現象の収集・研究者)が説いています。
宗教における神や天使との遭遇譚、民間伝承における妖精や吸血鬼の伝説と比較し、それらの現代版が一連の現象であるという説です。つまり、宇宙から来たと思わせているだけで、妖怪(に類する者)に化かされているのだと。
なるほど、天狗に拐われて異界に行った少年の話が日本にありますが、それの現代版が宇宙人にUFOに乗せられ宇宙を見てきたという話という訳ですね。
しかし、人間の宇宙進出が進めば、妖怪や幽霊もまた本当の宇宙進出を果たすとも思えます。「宇宙ステーションであった怖い話」とか、「宇宙飛行士の幽霊」とかが定番になる日も来るかも知れませんね。
>まみやんさん
コメントありがとうございます!
UFOや宇宙人も妖怪の一種というのは、面白い観点ですね。
人が遭遇した超常現象、という意味では両社に違いはないですからね。
宇宙ステーションに出没する妖怪など、遭遇できる日が楽しみです。笑