山奥の苦労人 わいら
どうも、最近爪が伸びるのが早い気がします、神代です。髪の毛が早く伸びるのは卑猥な事ばかり考えているからだという言い伝えがありますが、爪が早く伸びる人は一体どのような人なんだろうな、と気になって調べてみました。
するとどうやら世間には『楽髪苦爪』という言葉があるそうで、楽をしていると髪が、苦労をしていると爪が伸びるようです。楽をしているとか卑猥な事ばっかり考えてるとか、髪の伸びが早い人は謂れのない罵倒を沢山受けて可哀そうですね。
さて、そんなこんなで今回は鋭い爪を持った妖怪である『わいら』を紹介します。
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わいらは腕の先端が鉤爪になっている妖怪で、山奥に生息しています。目撃例の少ない妖怪で主にモグラを食べて生活しているようですが、大きい個体は人間を襲う事もあるとか。
また、雄の体色は土色で雌は赤色をしているという伝承もあります。このような『生物としての特色』がある妖怪は実在性がぐんと増しますね。当時の未確認生物のような扱いだったのでしょうか、わいらは。
また、この妖怪の姿は「化物づくし」や「図画百鬼夜行」などに描かれているのですが、奇妙なことにどの図画を見ても、上半身だけしか載っていないのです。鉤爪を持った手とおどろおどろしい顔だけ。当時の資料では、わいらの下半身事情は一切見えないのです。
どうして当時の妖怪画家たちは、わいらの下半身をかたくなに描かなかったのでしょうか。考えてみた結果、ある仮説にたどり着きました。
そもそも、描かなかったのではなく、描けなかったのではないだろうか、と。
そう、わいらが地中で生活する妖怪だとしたらどうでしょう。彼らが目撃されるのは地中から顔を出した時だけ。それ以外は視認できない地中にいる。だからこそ下半身の目撃情報が無く、上半身だけの図画が量産される事となったのです。主な食べ物がモグラと言うのも、この仮説を裏付けます。
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また、わいらという名前について、語源が『畏儡(わいらい)』(恐れて畏まること)から来た物だとする説があります。わいらの平伏したような姿勢が何かを恐れているように見えるからという事です。
ですが、これって凄く怖い仮説ですよね。逆説的に考えたなら、山の中にはわいらが常に怯えて平伏すような化物が住んで居るという事なのですから。
山は人間の最も近くにある異界という解釈があります、富山県には山の中に地獄があるという民間信仰があった程です。そんな中に何がいたとしても、驚く事ではないのかもしれませんが。
わいらの爪が長いのは、常に見えない何かにおびえて苦労しているからなのでしょうか。楽髪苦爪、お後がよろしいようで。
(画像:図画百鬼夜行)
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