『異』とは何ぞや? 異獣
「再配達 異獣もついに 値を上げる」
どうも、神代です。冒頭の文は第12回妖怪川柳コンテストで大賞に輝いた作品です。異獣という妖怪を取り上げ、昨今の宅配業界の問題を扱うだけでも名文ですが、最後の「値を上げる」が「音を上げる」とかかっているのも見事としか言いようがありません。
というわけで、この感銘に引っ張られながら本日は『異獣』という妖怪を紹介しようと思います。
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昔、新潟県で旅人が冬の山道を歩いて居ました。歩き疲れた旅人が休憩をするかと腰かけた所、山の奥からけむくじゃらの猿のような生き物が現れ、旅人の弁当を物欲しそうに見ます。旅人が弁当を分けてあげると、その生き物は喜んで食べ始めました。その後、自ら進んで旅人の荷物を持ち、山から下りる案内をしてくれたそうです。可愛い。
これは余談ですが、それ以降弁当の味を覚えたのか山の中や街中で異獣が人間に食べ物をねだる事がたまにあるという事です。可愛い。
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さて、異獣と言う妖怪です、読んで字のごとく異なる獣。型があるから型破りがある、というわけではありませんが、獣という概念があるから異獣があるのです。それでは、異獣は普通の獣と比べてどこが「異」なる存在なのでしょうか。
考えるに、異獣は獣らしくない獣なのではないでしょうか。重い荷物を軽々と持ち上げる力と、見えない速さで走る俊足を持つ圧倒的な強さを持った生き物。しかし、彼は獣らしくはありません、その力を一切行使しないのですから。
もし異獣がその気になれば、旅人を殺して弁当を奪う事など容易いでしょう、人里に表れて食物を奪って逃げる事もまた。でも異獣はそれをしませんでした。弁当を分けてもらった代わりに誠実に荷物持ちと案内役をこなし、人里でも食べ物をおねだりするだけです。
異獣は獣のように分別のつかない行動は取らない。なるほど確かに、普通の獣とは異なっている存在でしょう。そういった意味で彼は獣の中で異端であり異常なのですね。周りと異なる事は一概的に悪い事ではありません。この妖怪はその名を以て、当たり前のことを我々に教えてくれているのかもしれませんね。
ここで一句、『 弁当で 山の妖怪 懐柔だ 』異獣だけにね。
どうも僕には川柳は難しいようです。 お粗末様でした。
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