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最悪の妖怪―縊鬼―

ある同心は宴会の誘いを断ってこう言った。———すまない、今日は『首をくくる約束をした。』

今日紹介する妖怪は『縊鬼(いつき)』、くびれ鬼とも呼ばれます。その妖怪に取り憑かれた人間は、自殺をしなければならないという使命感に駆られてしまうと言います。

どうも神代です。この妖怪の名前を聞くと、大学の時にサークルの飲み会で救急車に運ばれた先輩を思い出します。飲み過ぎというのは緩やかな自殺のようなものですよね。

何でそんなことを思い出したかというと、先輩が倒れた原因がショットガンと言うお酒の『イッキ』飲みだったからなんですけど。おあとがよろしいようで。

すいません、最後まで読んでください。

縊る、というのは首を絞めて殺すという意味、縊れはその命令形ですね。人に自分を殺せと命令する鬼、というのがこの妖怪の特性です。鬼と言うよりは死霊に近い気がします。

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中国にも同名の人に自殺をそそのかす妖怪がいますが、その妖怪が自殺をさせるのは、自分の為なのです。というのも、中国の地獄観では獄中に収容できる死者の人数と言うのが決まっており、自分の代わりとなるものを連れてくれば、ロケット鉛筆のように自らは地獄から解放される事が出来るからです。

自らの代わりとなる者の条件はたった一つ『自分と同じ死に方をした者である事』。その為、首吊りや入水自殺で死んだ者は鬼となり、自らの代わりを立てるべく人に自殺を命じるのです。

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さて、このような憑き物による自殺の伝承は各地にあるのですが、いずれも共通するのは『自殺をするような人ではない人が』自殺をする。と言う点ですね。自殺をしそうな人が自殺をするというのを怪異のせいにするのは無理があるので、当然と言えば当然のような気もしますが。

しかし、自殺するような人ではない人、というのはあくまで残された方、つまり生者の主観です。むしろ、日々の苦しみを表に出さないような人の方が、感情が爆発したときに極端な結論に走りやすいのではないでしょうか。この逸話を語り始めた人は、そういった内面の機微に理解の無い人であったことは容易に推測されます。

もし、自殺を考える程に追い詰められた時には、縊鬼という怪異に連れて行かれた事にならないよう、周囲に自らの辛さを打ち明けるのが吉でしょう。それは自らを救う事にもなります、きっと。

縊鬼が最悪の妖怪たる所以は、逸話が増える事自体があってはならない妖怪だからなのです。

(画像:夜窓鬼談)

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