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妖怪とコスプレと地域の景観——調和の場を育てるということ

観光地や歴史ある町並みで、突然カラフルなキャラクター衣装をまとった人々が歩いていたら。驚く方もいれば、眉をひそめる方もいるでしょう。一方で、そうした光景に魅了され、シャッターを切る観光客も少なくありません。
現代のコスプレ文化と、地域社会との関係——それは、賑わいと違和感の狭間で揺れ動く複雑なテーマです。


景観と文化、そして「違和感」

伝統的な町並みや歴史ある場所では、とりわけ「景観との不一致」が議論を呼びます。江戸情緒ただよう街角に、異世界ファンタジー風のキャラクターが立っていたら、それを「風情」と取るか「場違い」と取るかは人それぞれ。
さらに、宗教施設や史跡では、元来「楽しむために入ってはいけない」領域も存在します。現地に根付いた価値観や歴史観を大切にする人々にとって、無自覚なコスプレ参加者の存在は、ときに文化の軽視と映ってしまうのです。


モラル・配慮・ルールが守る「自由」

一方で、コスプレをする側にとっても、表現の自由や、好きなキャラクターを演じたいという純粋な気持ちがあります。「なぜ肩身の狭い思いをしなければならないのか」という声もまた、無視できません。
この両者の主張が衝突せず、共存しているのはなぜか。そこには、モラルや配慮、ルールという「クッション」の存在があります。そしてそのクッションを整えてきたのが、長年にわたり活動してきたコスプレイヤーたちの努力であり、運営側の細やかな設計なのです。


「妖怪を歓迎する場」を整える

こうした調整の実例として、「川越妖怪まち歩き」があります。ここでは川越の街全体が、妖怪姿で歩くことを歓迎する空間となりました。商店街の方々や観光客の多くがイベント趣旨を理解し、町ぐるみで“妖怪日和”を楽しむことができたのです。
また、「東京百鬼夜行」では、高円寺ルック商店街の50店舗以上が「妖怪歓迎店」として名乗りを上げ、妖怪コスプレの来訪者を快く受け入れる体制が整えられました。

さらに、「會津白狐伝説」も注目すべき事例のひとつです。開催2年目を迎えたこのイベントでは、地元の「会津十楽」さんが、かつては会津若松城で露店すら出せなかった状況からスタートし、コスプレ自体も一時は制限されるなど、厳しい環境に直面していました。しかし地道な信頼構築と丁寧な調整を積み重ねた結果、会津若松城の建立にまつわる白狐伝説に基づいた狐の行列企画を実現できるまでに至ったのです。


運営が担う“橋渡し”

もちろん、一般の人々が自発的にコスプレに理解を持つことはそう多くありません。だからこそ、一般の場を借りてイベントを開催する運営側には、参加者と地域社会の間を取り持つ役目があります。
弊社が行っているのは、地域・企業・自治体との対話を重ね、ルールや運用を明文化すること。その過程を通じて、地域に根ざした文化としてコスプレや妖怪の姿が受け入れられるよう工夫を凝らしています。


交わるには「その場に寄り添う姿勢」を

地域と交わるためには、ただ「そこにいてもいい」ではなく、「その場にふさわしい存在としてどう振る舞うか」という気持ちが大切です。
イベントやまちの趣旨に寄り添い、地域を盛り上げる一員として妖怪やキャラクターになりきる——その楽しみ方が、結果的に地元の方々との信頼関係を育てていくのではないでしょうか。


うまくやれている世界の継続のために

現状、私たちは決して「うまくやれていない」わけではありません。むしろ、先人たちが築いてきたモラルと努力に支えられ、すでに多くの「うまくやれている世界」が存在します。
それでも、常に配慮は必要です。妖怪という、古くて新しい文化を通じて、地域と現代の表現が交差する場を丁寧に育てていきたい——そう願ってやみません。

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