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妖怪ウォッチ人気から考える現代の「妖怪の定義」について

妖怪といえば

昨今、レベル5さんの妖怪ウォッチにより子供たちの間では
妖怪といえば妖怪ウォッチ」になっている現状。
このブログを見てくださる一部の妖怪フリークの皆様からすれば
あれ(妖怪ウォッチ)はポケモン的なものであって、本当の妖怪とは一線を画すものだよ!
という方もきっといらっしゃることでしょう、そうでしょうそうでしょう。
私もそのくちではあったのですが、子供と一緒になって妖怪ウォッチをみていると
しっかり元の妖怪をリスペクトした所もあったり、完全なオリジナルな
妖怪であっても、ネーミングのルールがダジャレになっているというだけで
しっかり日常の科学では解明出来ないあるある現象を「妖怪不祥事案件」として
定義している、結構芯のあるものだったりしまして。
レベル5の妖怪考えてる人すごいやん。て感動すら覚えます。
そこで、あくまで、特に大学で民俗学をやってきたわけでも、妖怪について文献を
あさりまくったわけでもない私ではありますが、妖怪についての
定義を少しだけ深く踏み込んで考えてみようと思います。

まずは一般的な妖怪の定義から

妖怪研究のパイオニアである井上円了さんの定義を一般としてよいのかどうかですが、
円了さんは実怪として妖怪を現代の科学では解明できないもの
真怪自然現象によって実際に発生する妖怪仮怪に分類。
更に虚怪として誤解が主原因としたものを誤怪とし、
人為的に引き起こされたものを偽怪に分類
しているようです。現在妖怪として認知されているもののうち、
割合としては5割が偽怪、3割が誤怪としているようで
つまり、ほとんどが科学で解明できる現象だったり人のついた
嘘だとしているようです。
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また、妖怪民俗学の権威である小松和彦先生の著書「妖怪文化入門」での妖怪の定義でいうと
人が出逢った時に「不思議と思う」事のうち
現象としての妖怪(コト)と存在としての妖怪(モノ)それらを統合的な
カテゴリーとして捉えたものだとしています。
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現代の妖怪ブームについて

きっと円了さんでも近代の妖怪ブームは予測できなかっただろうと思います。
しっかり定義していくと妖怪なんていなくなっちゃいますし。
偽怪のせいで狐憑きだとか犬神だとか言われて村八分みたいな扱いを
受けてきた人々もいるので、偽怪はいい部分だけではないですから。
一方で小松和彦さんは「ピカチュー」が国境を超えているのだから
「見越し入道」だって国境超えると著書の中でおっしゃっていました。
実際、ポケモンを凌ぐ勢いで妖怪ウォッチのブームが巻き起こっています。
青森のねぶたに登場したジバニャン、富岡八幡宮の祭の屋台でも妖怪ウォッチまみれ。
国境を超えるのは時間の問題でしょう。
私はこの妖怪ブームから、過去の妖怪定義を踏まえてどう変わってきたかを
考えてみました。
 

あえて妖怪のせい

例えば妖怪ウォッチに「ムダヅカイ」という妖怪がいるのですが、
これは単にムダヅカイしちゃったという育ってきた環境や個人の性格の問題で
引き起こされる「あるある現象」を具現化した妖怪なのです。
何がいいたいかというと、解明できているようなことをあえて妖怪のせいにして
第三者に責任を転嫁しているという部分に着目しました。
これらは円了さんの定義の中で言えば人為的に引き起こされた妖怪である偽怪
に分類されており、小松和彦さんの著書では「エンターテイメントとしての妖怪」と
呼ばれておりますが、私はそれら偽怪のうちのエンターテイメントとしての妖怪
が独自進化してブームを生んだと思っています。
今も昔も子供(や大人)は責任を押し付けられると反発しますよね。
昔はどうだったかというと、大人がわりと力任せに頭をこずいたりして
言うことをきかせていたのかもしれませんが
現代では虐待やネグレクトの問題などから、周りの目を気にして
自分や他の子供には強く言えない親や、周りの対応が変な意味でソフトに
なっていると思うんです。
ところが、一旦「妖怪のせい」だった事にすると、多くの場合は反発せずに
うまく子供をコントロールすることができるのです!
「○○ちゃん、ムダヅカイに取り憑かれちゃったかなー?次は大事に使おうね!」
と諭すことで、あたかも子供は直接怒られた気にはならず、
素直に「うん」と言いやすい。
特に反抗期のお子様には効果てきめんなのです!
現代は情報量の多い世の中ですから、子供の知恵(悪知恵)や
自尊心が芽生えるスピードも比べ物になりません。
時には直球で叱る事も大事ですが
命の危険と、他人に迷惑をかける事以外ではあまり叱らないようにして
うまく子供をコントロールする知恵が必要なのかもしれません。
大人も時代に順応しつつ、子供の知恵に負けないように
成長しなければならないのですね。
 

まとめ

というわけで、私の考察からすると現代の妖怪定義の傾向としては
偽怪・仮怪が再隆起してポケモン的要素を巻き込みながら
エンターテイメント性を強くもってきたと言えます。
具体的には生活における「あるある現象」を「妖怪のせい」として
都合よく定義したということです。
多少、お金のニオイがしますがそれは当然です。当時の妖怪ブームも
人為的な利害関係における要素も当然ありましたので、
今も昔も本質は変わっていないということです。(それで再隆起としました)
今回はエンターテイメント性について一部触れましたが他にも
現代ならではの要素があるのでまた切り口をかえて記事にしたいと思います。
最後に妖怪ウォッチのキャラで例をあげましょう。
・長い話をする人 = ナガバナ
・うっかりおなら = おならず者
・秘密をばらしちゃう = バクロ婆
・頼まれごとを断る = ムリカベ
一つ一つ、何でそうなっちゃうのかを
心理学的な話や科学的な根拠で子供に説明することはできません。
でも「妖怪のせい」にしてしまうと、あら不思議。
子供が喜んで言うことをきくのです。お金(妖怪ウォッチのキャラグッズとか)と引き換えに!(笑)

嘆き

こうして偽怪が台頭し、妖怪がエンターテイメント化していくと
当然「怖くなくなり」ます。子供たちに人気である必要があるから。
もはや妖怪は怖いというイメージがなくなるのも時間の問題かもしれませんね。
それでも、私はやっぱり「怖い妖怪」も伝えて行きたいと思うわけですよ。
妖怪ウォッチブームから古典妖怪を含む日本文化そのものに
興味をもって貰える子供たちが増えることを祈ってます。
レベル5さんバンダイさん、その辺り商いに走らなすぎるよう
なんとかお願いします!(笑)
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