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妖怪から見る韓国(トケビ)

日韓関係が揺れています。

ここ近年の大きな動きでいうと文在寅大統領就任以降に起こった、2018年の韓国での徴用工問題(新日鉄住金への損害賠償命令)に端を発し、日本政府による韓国のホワイト国外しなどの経済制裁、それによる韓国株価の下落があり、韓国経済は危機に瀕しています。

一方で、日本側としても半導体原料のフッ化水素などを始めとして韓国向け輸出の減少や、訪日観光客の減少など、少なくない経済ダメージを受けており、両国の関係は泥沼化しています。

更に、8月22日にはGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)破棄の決定など、外交関係は大きく緊張している状況です。

お互いに経済戦争を仕掛けてもよいことはないのだから、小市民としては、少なくとも民間レベルでは仲良くやってほしいとは思いますけどね。

両国とも歴史背景やプライドがある分、難しいのかもしれませんが。

 

ということで今回は、この機会に韓国のことを知っておこうということもあり、あまり馴染みのない韓国の妖怪を紹介したいと思います。

中国、沖縄(琉球)、東南アジアなどはオリジナルの妖怪が多くいるのに関わらず、韓国(朝鮮半島)の妖怪は日本ではほとんど知られていないように思えます。

「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメでも、「西洋妖怪」「中国妖怪」「南方妖怪」にカテゴライズされる妖怪は多く出てきますが、「韓国妖怪」や「朝鮮妖怪」が出てくることはほとんどありません。(原作で韓国、朝鮮の妖怪が少し出てきたことはありますが)

知られていない原因としては、そもそも韓国オリジナルの妖怪がほとんどいないからと言われています。

 

そのような中でも、有名なのは「トケビ(トッケビ)」です。

これは、日本でいう「」に近い存在ですが、あまり恐ろし気はなく、性格は楽天的でいたずら好きとされています。どちらかというと、日本の「河童」に似た特徴を持っています。

古くは具体的な象形はなく、鬼火などの精霊的な存在として言い伝えられていました。古くは中国の鬼神と混合され、近代以降には日本の「鬼」の特徴が入ってきたとされています。

地域によっても独自の伝承が多く、統一的なイメージはあまりないそうです。

水木しげる先生も、いわゆる鬼のイメージの「トケビ」と、火の玉のイメージの「トッカビ」の2パターンの絵を描いて残しています。

今回、日本で手に入る韓国妖怪についての書籍を少し調べてみたのですが、韓国では妖怪研究があまり盛んではないことも、韓国妖怪があまり有名ではない一因のようです。

一番メジャーとされる「トッケビ」でさえ、上記のように時代や地域ごとに全く異なるイメージで語られていました。

それはそれで、韓国国内の地域差や時代背景を考えるにはもってこいの研究対象になりますし、統一されたイメージがないということ自体が、おもしろい現象だとは思います。

水木しげる先生の「続 水木しげるの世界妖怪事典」などには、「トケビ」以外にも「冤魂」「夜光鬼」「親族鬼」「蛇娘」「自由魂」「不可殺」「孫閣氏」など、妖怪というよりは精霊や心霊、鬼神の類に近いものですが、面白い言い伝えがたくさんありますので、機会があれば紹介したいと思います。

日韓関係は今後もどうなっていくのか緊張状態が続きますが、民間レベルではお互いの文化を知っておくという意味で、相手国の妖怪を調べてみるのは、ひとつの視点として面白い試みだと思いました。

画像=水木しげる「妖怪化(むじゃら)」より

文=渡邉恵士老

参考文献: 「続 水木しげるの世界妖怪事典」(水木しげる、東京堂出版)、「季刊 怪 第伍号」(角川書店)、「韓国昔話集成 2 動植物昔話 本格昔話」(崔仁鶴、悠書館)

 

■渡辺恵士老(けいちゃん)

北海道旭川市出身。 早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。

現在は北海道札幌市と東京の二拠点生活をしながら、経営・ITコンサルティングを生業としているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の研究を続けている。

現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。

Twitter:https://twitter.com/keishiro_w

ブログ:http://blog.livedoor.jp/meda3594/

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  1. まみやん

    トケビは血の付着した箒が化けたものという説もあり、付喪神の一種とも解釈できますね。そのため一本足であるという話もあります。また、親族鬼とも混同され、持ち主の家庭の人間を好んで襲うとも云われていますね。

    • けいちゃん

      まみやんさん、コメントありがとうございます!
      付喪神との共通点という視点は面白いですね。
      水木しげる先生の解説にも「長い一本足で現れることもある」と書かれています。
      親族鬼も近い存在なのですね。色々とつながり、おもしろいですね。

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