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音と妖怪(うわん、べとべとさん、小豆洗いなど)

中国貴州省で2020年6月26日(金)頃から、堅強村という場所の谷合から謎の怪音が聞こえると話題になっています。

牛の鳴き声のように聞こえますが、どこから鳴っているのか分からず、現地では、龍の鳴き声ではないかという説もあるようです。

何処から聞こえるのか分からない謎の音ということでは、アポカリプティックサウンドの一種のように思えます。

アポカリプティックサウンド(終末音)は、2011年頃から、ウクライナ、デンマーク、ベラルーシ、カナダ、イギリス、インドネシア、日本など世界各地で断続的に発生する現象で、その名称は新約聖書『ヨハネの黙示録』の中で語られる終末神話に由来します。

この謎の音の正体ははっきりしておらず、宇宙人、UMA、怪獣、ゴジラの鳴き声という説もありますが、音が発生した後に、その土地では地震が発生することが多いことから、天変地異の前触れではないかとも云われています。

実際に、今回の中国では、7月2日に同じ貴州省でマグニチュード4.5の地震が発生したようです。

音にまつわる妖怪たち

音にまつわる怪異は古くから数多くあります。

音だけで、姿を見せない妖怪は数多くいます。

うわん」は、古屋敷の近くを通ると、いきなり、「うわん」という声で人を脅かす妖怪です。

「うわん」と叫ぶだけの妖怪で、その姿を見た者はいません。

べとべとさん」は、夜道を歩いていると、後ろから「べとべと」という足音とともに付いてくる妖怪です。

これも、その姿は見えず、足音や気配しかありません。「べとべとさん、先へおこし」というと、付いてくる足音がしなくなると云われます。

静か餅(シズカモチ)」も音だけの妖怪で、夜中にコツコツという餅の粉をはたくような音が遠方から聞こえるというもので、この音を聞いた人は長者になるという言い伝えがあるそうです。

貝吹き坊」は、法螺貝を吹くような音を出し、どこにいるのか、誰もその姿を見たことのない妖怪です。

古杣(ふるそま)」は、山の中に出て、木の倒れる音がするが、そこに行っても何もない。そうした不思議な声や物音を立てる妖怪と云われています。その正体は、山中で命を落とした木こりの霊と云われています。

小豆洗い」は、ショキショキという小豆をとぐような音と、「小豆とごうか、人とって食おうか、ショキショキ……」という歌とともに現れる妖怪です。姿を現すこともありますが、ほとんどの場合は姿は見えずに音だけが聞こえるそうです。

どこからともなく歌が聞こえるというところでは、海外の「セイレーン」や「ローレライ」との共通点があるかもしれません。

セイレーンは、歌や音楽で船乗りを魅惑し、自分たちの島に引き寄せ、岩場や浅瀬に引き込み船を難破させる、上半身が人間の女性で、下半身が鳥または魚の姿をした生物です。

物理学と妖怪

物理学者の寺田寅彦は、「怪異考」の中で高知県浦戸湾に伝わる怪音の現象である「孕のジャン」について触れ、地震の多い土地柄であることから、地鳴り現象が「ジャン」ではないかと推察しています。

冒頭の中国貴州省の怪音も、地震の前触れであった可能性があることから、音の怪異と自然現象の関係性は深いと言えるでしょう。

日本でも、南海トラフや首都直下地震がいつ起こってもおかしくないと云われています。

怪音が聴こえた時、それは地震の前触れかもしれません。

文=渡邉恵士老

■渡辺恵士朗(けいちゃん)

北海道旭川市出身。早稲田大学人間科学部卒。在野の妖怪研究家。公認情報システム監査人(CISA)、プロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)。

現在は経営・ITコンサルティングを生業として、北海道札幌市に居住しつつ道内各地や東京などを駆け巡っているが、大学の時には民俗学・文化人類学を学んでおり、ライフワークとして妖怪の調査研究を続けている。

現在住んでいる北海道にまつわる妖怪や、ビジネス・経済にまつわる時事ニュースと絡めた妖怪の記事を執筆中。

Twitter:https://twitter.com/keishiro_w

ブログ:http://blog.livedoor.jp/meda3594/

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