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嵐を誘う海の不幸

 初めまして、福井県住みのオカルト&サブカルライター、神代です。普段は地方のオカルト文化の普及のため「北陸オカルト会」という座談イベントを主催しています。この度、ご縁があって妖怪ちゃんねるにて記事を書かせてもらう事となりました。

 さて、私たちが住む北陸は、日本海側の対馬海流とリマン海流の境目、いわゆる「潮境」の付近に位置しています。潮境では、二つの海流に乗って流れてきたプランクトンがぶつかり合って溜まる為、それを餌とする魚が豊富に取れます。北陸は魚がおいしい、と言われる所以ですね。

 ただ、海流に乗って流されてくるのはプランクトンだけではありません。

 画像は福井県若狭湾に現れたとされる妖怪で、名を入亀入道。または、和尚魚と言います。江戸時代の百科事典「和漢三才図会」に記されている人面亀身の化け物で、その正体はウミガメを妖怪視したものであるとも、くちばしの無いイルカの誤認だとも言われています。しかし、あまりに見た目のインパクトが強すぎる。しかもよく見ると表情に哀愁がある。なんだその不満そうな目は。

 この妖怪は人間を見つけるとニタリと笑いかけるそうです。そして、和尚魚が現れた海域では海が荒れたり、船が転覆すると言われています。出現自体が凶事の前触れ、という事でしょうか。確かに「目の前を黒猫が通り過ぎる」よりも「人間のおじさんの顔をした亀に笑いかけられる」の方が凶兆の度合いで言うと圧倒的にヤバい感じがします。

 似たような妖怪にがいます。人面牛身の化け物で、主に凶事の前触れとして預言をすると言われています。頭は人で体は別の動物、出現が凶兆となるなど、よく考えてみれば、両者には無視できない共通点があるような……。和尚魚ももしかして、海の凶事を予知する事ができるのでしょうか。

 和尚魚は自らの外見のインパクトを利用し、凶事が起きそうな海域に現れてはその不気味な笑顔で人を危険から遠ざけている。そう考えれば、哀愁を帯びた表情にもダークヒーロー的な説明がつくような……流石に無理があるな。

 地震の予知をするナマズ、火事の予知をするネズミ、サッカーの勝敗を予知するタコなど、動物の中には人間が真似できないような予知能力を持った個体がいます。貴方が飼っているペットも、飼い主が気付かないだけで、ひっそりと何らかの予知をしているかもしれません。

(画像:和漢三才図会より)

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  1. まみやん

    基本的に人面+獣という妖怪は、預言をするor何かの前触れだと言えます。
    人面=人語を喋る=人間に何かを伝えるという式で、人魚や尼彦も類型ですね。

  2. 幽神代

    象の鼻、虎の足など、生物の優れた部分にはその生物の本質、神性が宿ると言います。(鵺などの動物のツギハギ妖怪が神性を帯びるのはその為。)人間の優れた部位は顔貌・頭脳に宿り、そこに付与される属性は現在の状況を分析することによる未来の予言・予知なのかもしれないですね。

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