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狸囃子のお話

  歳が明けたかと思えば、もう一月もおわりでございます。
 忙しくあちらへこちらへと右往左往していますと、いつの間にやら時が過ぎておりますね。
 この時期は新年会など、仲間や親族と集って語らう機会も、みなさまには沢山おありでございましょう。
人が集えば話に花が咲き、宴には酒もすすみ、呑めや歌えやとさぞお楽しみであったことでしょう。
さて、此度はなんのお話をいたしましょうか。
そうそう……………呑めや歌えや、と申せば、我がはらからたちはそういった騒ぎが大変好きでして、興が乗れば腹鼓を披露する者も多くおります。
そんな狸たちの楽しむ宴の音が風に乗って聞こえれば、人はそれを狸囃子というのでございます。

それでは此度は一つ、狸囃子のお話をいたしましょう。
 狸囃子とは、音の怪異として日本津々浦々、様々に伝わっておりますが、人には音の出所がようとして知れず、その名の通り狸たちの仕業であろうと思われておるものでございます。
 そんな狸囃子のお話の中でも、おそらく皆さまもご存知なのが、證誠寺に伝わる狸囃子伝説でございます。

 しょ しょ 證城寺
      證城寺の庭は
 つ つ 月夜だ
      皆でて来い来い来い

童謡作家、野口雨情が作詞したこの曲は、證誠寺の狸囃子伝説をもとに作詞されました。
歌の中では、こんなに愛らしく、面白可笑しく表現されておりますが、実は元になったお話の幕切れは、少し切ないものなのでございます。
 歌詞にもあるように、和尚と狸たちは囃子合戦をいたします。
 歌い踊る狸たちのあまりに楽しそうな姿に、和尚は三味線を奏でて加わることにするのですが、すると狸たちは、和尚の三味線に張り合ってさらに大きな腹鼓を響かせます。

 負けるな 負けるな
     和尚さんに負けるな

 そう歌詞にもあるとおり、それから毎晩、和尚と狸たちの囃子合戦は続きました。
 しかし、他の狸たちを煽り、腹鼓で調子をとっていた大狸が、三日目の夜が明けた頃に腹の皮が破けて、後に死んでしまうのです。
……まったく…………楽しければどんな事にも、命をかけて臨んでしまう、狸たちは阿呆だけれどなんとも無垢でいじらしゅうございます。
……しかし、それが我らの言う〝面白い〟にかなうならば、それを厭わないのが狸なのでございます!
………………おっと、失礼いたしました……。


 和尚は哀れに思ってその大狸を弔いました。
今も證誠寺にある狸塚は、この大狸の供養のために作られたものでございます。
 ちなみに、実はこの死んでしまった狸には娘がいたなんて話もあるそうで…………
 まぁ、そのお話はまた次の機会にでもいたしましょう。
 
…………そういえば、ついこの間も、お酒に酔われていたのか、道に転がっていびきを掻いている方がいらっしゃいました……
狸でもない皆様は、宴がどんなに楽しくとも、あまり羽目をはずし過ぎませぬよう、お心得くださいませ。
 腹を破った狸のはらからからの、忠言でございます。

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